作業療法士(OT)といえば、病院でリハビリをしているイメージを持つ人が多いと思います。
実際、ここイギリスでも多くのOTが病院に勤務していますし、私も以前は10年ほど病院で働いていました。
でも、今の私は病院ではなく市役所の社会福祉課(Adult Social Care)で働いているOTです。
働き方は?週2出勤、あとは在宅ワーク
現在の勤務スタイルはこんな感じ:
- 週に2日はオフィス勤務
- 残りは在宅ワーク(9時〜17時、1時間休憩あり)
病院時代に比べて大きな違いは、やっぱり自宅で仕事ができること!週に2日も特に日にちを決めなくてもいいので、基本は月曜と水曜になるべく行くようにしていますが、ちょっと用事があったりする時には気軽に変えられます。
役所の仕事はレポートや書類作成などデスクワークが多いので、在宅ワークとの相性がとても良いです。
とはいえ、クライアントの自宅にも訪問します。週に平均4件ほどの訪問があります。
主な業務①:移乗補助機器のアセスメント
私たちの仕事で一番多いのが、manual handling assessment(移乗のアセスメント)です。
イギリスでは、介護者(ケアラー)を守る法律が非常に厳しく、ケアラーがクライアントを直接持ち上げて介助することは禁止されています。
日本では、ご家族や介護職の方が、「抱え上げるようにして移乗介助」をする場面がありますよね。たとえば、ベッドから車椅子、車椅子からトイレなどへの移乗の際に、相手の体を支えたり、場合によっては持ち上げたりして介助することもあります。学生の時に、腰の負担をなるべく軽減しながらの移乗介助方法とか習いました。
でも、イギリスや他の欧米諸国ではこのやり方は基本的にNGです。
その理由は、介助者の腰や体に大きな負担がかかるだけでなく、利用者にとっても非常に危険とされているからです。🫨
持ち上げる動作は不安定で転倒やけがのリスクがあり、本人の尊厳や自立の妨げにもなりかねません。こうした背景から、イギリスの介護現場では、福祉用具を活用して、安全で負担の少ない移乗を行うことがスタンダードとなっています。
そのため、介護会社やクライアントから「適切な移乗補助機器を選んでほしい」と依頼が来ます。
私たちOTが現場に出向き、クライアントの身体状況・家屋構造・ケアラーの体力などを総合的に評価し、最適な機器を提案します。
たとえば:
- フルホイスト
- スタンディングホイスト
- Sara Stedy
- Molift
機器のアセスメントも貸与も、基本的には無料です(行政から提供されます)。
主な業務②:住宅改造のアセスメント(Major Adaptation)
次に多い業務が、住宅改造(major adaptation)のアセスメントです。
たとえば:
- 階段昇降機(stairlift)の設置
- バスタブを撤去してステップフリーのシャワーに変更
- 室内用エレベーター(through floor lift)の導入
- 段差解消や手すり設置
- 車椅子対応のキッチン改修 などなど…
これらの改修は、DFG(Disability Facilities Grant)という国からの補助金でまかなわれることが多く、申請にはOTのアセスメントが必須です。
DFGの上限は通常£30,000(約550万円)ですが、必要性と適切性が認められれば申請が通ります。
その他の業務:ハウジングレポートの作成
他にも、Housing Association(住宅協会)やCouncil House(公営住宅)に住んでいる方で、
「現在の家が障害のため生活に合わない」といったケースでは、
“障害のため住宅の住み替えが必要である”というレポートを作成することもあります。
例えば、事故や病気で車椅子生活が続く事になったのに、フラット、マンションの2階に住んでいる人は出来れば地上階の段差がない家に移った方がいいですよね。それをサポートする為に。医療的な根拠を示す文書を作成し、住宅部門に提出します。これも私たち、役所で働くOTの大事な役割の一つです。
まとめ:役所のOTもやりがいたっぷり!
役所のOTは、リハビリはしません。
リハビリは、病院や地域リハの「リハビリOT」の役割です。
私たち“Adult Social Care(ASC)”のOTが関わるのは、リハビリを終えたあと。もうこれ以上、身体機能の大きな回復は見込めない…でも生活は続いていく。そんなタイミングで、私たちは動き出します。
私たちの役割は、「機能回復」ではなく、環境を整えること。
住宅改修や福祉機器の導入など、環境を変えることで生活の質(QOL)を向上させていくのが、ASC OTの仕事です。
“生活の土台”に深く関われる、非常に実践的でやりがいのある分野だと思っています。
また、在宅勤務ができる柔軟な働き方など、病院勤務とはまた違った魅力もたくさん。
「OT=病院勤務」だけじゃない。
こんな働き方もあるんだって、知ってもらえたら嬉しいです。



